このページはPR・広告を含みます

ペロブスカイト太陽電池が前年比2倍超へ、急成長の裏にある勝負所

ペロブスカイト太陽電池が前年比2倍超へ、急成長の裏にある勝負所のイメージ

ニュースの概要

日本経済新聞は、ペロブスカイト太陽電池の世界市場規模が前年と比べて2倍を超える水準に達したと伝えた。薄くて軽く、曲げられる太陽電池として期待されてきた技術が、研究室の成果から実際の売り上げを伴う産業へ踏み出しつつあることを示す数字である。従来のシリコン型は重さと設置場所の制約が弱点で、ビルの壁や工場の屋根の一部には載せにくかった。ペロブスカイトはその空白を埋める存在として、国内外の企業が量産体制づくりを急いでいる。ただし市場が倍増したといっても、母数はまだ小さい。数字の勢いだけでなく、何が伸びを支え、どこに壁が残るのかを見極める必要がある。

引用元: ペロブスカイト太陽電池、前年比2倍超に 世界の市場規模(日本経済新聞)

分析・見解

倍増という数字は、小さな母数から始まっている

前年比2倍超という見出しは力強い。しかし、世界の太陽光発電市場は年間で数十兆円規模にのぼり、その大半はシリコン型が占める。ペロブスカイトはまだ全体の1%にも届かない水準だ。つまり今回の伸びは、巨大市場を奪い始めた証拠ではなく、ゼロに近い場所から実際の出荷が立ち上がり始めた合図と読むのが妥当である。

それでも意味は大きい。技術の普及は、試作品が売り物になる瞬間に加速するからだ。リチウムイオン電池も、最初の数年は年率で倍々に伸びた。今回の倍増は、同じ立ち上がりの局面に入ったことを示している。

伸びを支えているのは、置き場所が増えたこと

成長の本質は発電効率の競争ではない。シリコン型は1平方メートルあたり約15キログラムあり、古いビルの屋根や倉庫の薄い屋根には載せられない。ペロブスカイトのフィルム型は、その約10分の1の重さで済む。耐荷重(=屋根が支えられる重さ)の足りない建物が、新たな設置先に変わる。

日本は平地が少なく、すでに設置しやすい場所の多くが埋まっている。この国が世界でも早くから力を入れてきた理由は、ここにある。置き場所を増やす技術は、効率を数%上げる技術より、市場全体を広げる力が大きい。

耐久性と量産の壁は、まだ越えきれていない

シリコン型は25年以上の使用が当たり前だ。一方ペロブスカイトは、水分や熱に弱く、実用品でも寿命は10年前後とされる例が多い。フィルムで包んで水分を遮る封止(=すき間なく覆って湿気を防ぐこと)の技術が、寿命を左右する。

量産面でも、塗って乾かす工程で品質をそろえる難しさがある。小さな試作では高い変換効率を出せても、1メートル幅で均一に作ると数字が落ちる。ここを越えた企業だけが、価格競争の舞台に立てる。

勝負は、発電量より設置のしやすさで決まる

独自の視点として強調したいのは、この技術の競争軸が、従来の太陽電池と違う点である。シリコン型は1ワットあたりの価格を下げる競争だった。ペロブスカイトは、施工費を含めた総費用で戦う。貼るだけで済むなら、足場や補強工事が要らず、設置の人件費が大きく減る。

中国勢が価格で攻めても、日本勢には素材や封止の部材で強みがある。ヨウ素の世界生産の約3割を日本が占めることも、見逃せない材料だ。

ビジネスへの影響

導入を急ぐより、試験設置で実測値を集める

今すぐ全面的に採用する段階ではない。寿命の実績データが少なく、15年後の発電量を保証できる企業はまだ少ないからだ。賢い進め方は、倉庫や工場の屋根の一角に小規模に設置し、1年間の発電量と劣化の速さを自社で測ることである。補助金を使えば初期費用の負担も抑えられる。

契約を結ぶ際は、変換効率の数字よりも、出力保証の年数と、劣化したときの交換条件を確認したい。

建材や不動産の事業者には、新しい提案の余地がある

建材メーカーや設計事務所にとっては、窓や外壁に発電機能を持たせる提案が武器になる。屋根に載せられなかった建物でも、壁面を使えば、再生可能エネルギーの比率を高められる。上場企業は温室効果ガスの開示を求められており、自社ビルでの自家発電は説明材料になる。

一方で、投資の回収には10年近くかかる可能性がある。電気代の削減額だけでなく、環境評価の向上や入居者の訴求力といった効果も含めて判断することが肝心だ。

関連記事

← ブログ一覧へ戻る