このページはPR・広告を含みます

パナソニックHD、ペロブスカイト量産を2029年に前倒し

パナソニックHD、ペロブスカイト量産を2029年に前倒しのイメージ

ニュースの概要

パナソニックホールディングスは10月20日、ガラスと一体化したペロブスカイト太陽電池の本格量産を、従来計画より1年早い2029年4月に始めると発表した。拠点は滋賀県長浜市で整備中の量産技術開発拠点で、量産品は縦1.8メートル、横1.2メートルの大判サイズを想定している。商品名は「ENEFACE(エネフェイス)」。ガラス面に発電する層を塗り、レーザーで削って透明度や模様を調整する仕組みだ。ビルの窓や壁、手すりなど、これまで太陽光パネルを置けなかった場所を発電面に変えることをねらう。計画の前倒しは、技術の見通しが立ったという自信の表れとも受け取れる。

引用元: パナソニックHD、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産を2029年4月に開始(Panasonic Holdings / Bloomberg)

分析・見解

薄くて曲がる電池ではなく、窓ガラスそのものを狙った

ペロブスカイト太陽電池と聞くと、多くの人はフィルム状で曲げられる電池を思い浮かべる。だがパナソニックが選んだのは、ガラスに発電層を直接塗る方式である。フィルム型は軽さが武器だが、屋外で長く使うには封止(=水分や空気を遮る包み込み)が難しい。ガラス型は、ガラスで両面を挟めるため、水に弱いというペロブスカイトの弱点を構造そのもので抑えやすい。つまり、軽さを捨てる代わりに寿命と信頼性を取りにいった設計だと読める。

透明度と模様を変えられることが、建築での決め手になる

ENEFACEの特徴は、レーザー加工で発電層を部分的に削り、透け具合や柄を決められる点にある。発電効率だけを競うなら、全面を黒く塗るのが最も有利だ。しかし建築の現場では、採光、眺望、外観の意匠が同じくらい重い。設計者が「この窓は半分だけ光を通したい」と指定できれば、太陽電池は後付けの設備から、建材の選択肢の一つに変わる。屋根の空きが少ない都市部のビルでは、壁面や手すりまで発電面にできる意味は大きい。

一年の前倒しが示す、量産技術の見通しと競争の速さ

量産を2029年4月に早めたことは、実験室で作れることと、同じ品質で大量に作れることの間にある谷を越える道筋が見えた、と受け取れる。大判の1.8メートル×1.2メートルは、小さな試作品に比べて均一に塗る難度が格段に高い。ここを量産サイズとして打ち出したこと自体が、自信の表れである。背景には競争もある。中国勢は大規模な試験ラインを次々と立ち上げ、日本国内でもフィルム型を手がける企業が先行している。前倒しは、市場の主導権を握る時期を逃さないための判断でもあるだろう。

残る課題は価格、耐久年数、そして施工の仕組み

一方で、楽観できない点もある。第一に価格だ。従来のシリコン太陽電池は量産で大きく安くなり、比べられる立場になる。ただし建材と兼ねるなら、ガラス代や外壁材の費用と相殺して考えられる。第二に耐久年数である。窓ガラスは数十年使う前提で、発電層だけが先に劣化すれば交換の手間が重い。第三に施工だ。電気配線や防火の基準を、建築の職人と電気の事業者のどちらが担うか。この線引きが整わないと、良い製品でも現場に入らない。技術の勝負は、半分は製品の外で決まる。

ビジネスへの影響

設計の初期段階から発電を前提に入れる準備を

2029年の量産開始までは、まだ3年ほどある。だが大型ビルの設計は着工の数年前から始まる。2029年以降に竣工する案件を抱える不動産会社やゼネコンは、いまから窓や外壁を発電面として使う前提を検討に入れる価値がある。後から追加するのでなく、最初から建材として計画すれば、配線の通り道や荷重も合理的に決められる。まず自社の保有ビルのうち、日当たりの良い壁面や手すりの面積を洗い出しておくと、導入の効果が試算しやすい。

脱炭素の開示と電気代の両面で効果を見積もる

上場企業にとって、ビル由来の温室効果ガス排出の削減は、投資家への説明材料になる。屋上だけでは足りない都市型ビルでも、壁面を使えば自家発電の比率を上げられる可能性がある。ただし、発電量は設置方角や日射で大きく変わる。導入判断では、カタログの数値を鵜呑みにせず、実際の壁面条件での年間発電量と、電気代の削減額を保守的に見積もるべきだ。建材との費用相殺や、補助制度の有無もあわせて確認したい。

先行事例に参加し、基準づくりの側に回る選択も

新しい建材は、防火や耐風、保守の基準がまだ固まっていない。早い段階で実証事業に加われば、不安を自社で確かめられるうえ、自社の現場に合った仕様を提案する立場にもなれる。一方で、初期製品は割高になりやすい。全面採用を急ぐより、小規模な手すりや庇(ひさし)などで試し、保守や劣化の情報を蓄積してから拡大する段階的な進め方が、失敗のリスクを抑える現実的な策である。

関連記事

← ブログ一覧へ戻る