中国が太陽電池12技術の輸出規制案を公表、ペロブスカイト量産競争と日本勢への影響を読む
ニュースの概要
中国商務省は、太陽光発電に関する12の技術を輸出管理の対象に加える案を公表した。理由は国家安全保障とされる。対象には、薄型のシリコンウエハー、ペロブスカイト太陽電池、ペロブスカイトとシリコンを重ねたタンデム太陽電池、大規模な流動床法によるポリシリコン製造技術などが含まれる。まだ案の段階だが、実施されれば、中国企業が持つ次世代電池の製造ノウハウや設備に関わる技術を海外へ移すことが難しくなる。海外での量産計画や技術提携にも影響が及ぶ可能性がある。パネルの輸出ではなく、作り方そのものを管理下に置く動きとして注目される。
引用元: 中国、ペロブスカイトやタンデム太陽電池の製造技術に輸出規制案(Reuters)
分析・見解
規制の対象は製品ではなく、作り方そのもの
今回の案の特徴は、太陽電池の完成品ではなく、製造技術に網をかけている点にある。薄型シリコンウエハー、ペロブスカイト、タンデム、流動床法ポリシリコン。並んでいるのは、どう作るかという知識だ。パネルの輸出を止めたいのではなく、工場ごと海外に写し取られることを防ぎたい意図が読み取れる。
中国は近年、同じ手を繰り返している。2023年にはレアアースの抽出・分離技術の輸出を制限し、電池材料の分野にも管理を広げてきた。太陽光は、その流れの延長線上にある。
川上の要を握る薄型ウエハーとポリシリコン
中国は、ポリシリコン(=太陽電池の原料になる高純度のシリコン)やウエハーの世界生産で、圧倒的な比率を占める。流動床法は粒状のシリコンを作る方式で、従来法より電力を大幅に減らせるとされ、コスト競争の切り札になっている。ここを守れば、海外に工場を建てる企業は、原料側の技術を自力で用意するしかなくなる。
米国、欧州、インドは「脱中国」の供給網づくりを急いでいる。しかし設備と運転ノウハウが手に入らなければ、工場は建っても歩留まり(=良品の割合)が上がらない。
まだ勝者の決まっていない分野だから効く
シリコン単体の太陽電池では、すでに中国が価格で他を圧倒した。一方、ペロブスカイトとタンデムは量産の入り口に立ったばかりで、日本、欧州、米国にも勝ち目が残る。中国企業はタンデムの変換効率(=受けた光を電気に変える割合)で記録を競っており、海外での提携や合弁は次の成長策になるはずだった。規制案は、その出口を狭める。
つまり今回の措置は、築いた優位を守る手であると同時に、これから決まる次世代の主導権を逃さないための先手でもある。
日本勢には追い風と逆風が同時に吹く
日本は、フィルム型ペロブスカイトの量産化で先行している。原料のヨウ素は、日本が世界有数の産出国である。中国の技術に頼らず立ち上げる道があるのは強みだ。中国企業が海外展開で足踏みすれば、その間に日本勢は実績を積める。
ただし、塗布装置やレーザー加工機など、装置や部材で中国系に頼る部分は少なくない。報復的な動きが広がれば、調達の混乱は日本にも及ぶ。範囲や施行時期は案の段階であり、最終形を見るまで評価は固まらない。
ビジネスへの影響
中国企業との提携計画は、契約の前提から点検する
中国企業の技術導入やライセンスを前提に、海外で工場を計画している場合は注意が要る。輸出許可が必要になる可能性があるからだ。審査に時間がかかれば、設備の搬入や技術者の派遣が遅れ、投資回収の計画がずれる。契約書には、規制の変更で履行できなくなった場合の扱いを入れておきたい。延期、解除、費用負担の取り決めである。
調達先と技術の「二重化」を今から設計する
装置、材料、人材のどれかが中国に集中していないか、まず棚卸しをすることが第一歩になる。代わりになる国内外のメーカーが見つかれば、見積もりと試作を並行して進めておくとよい。大きな投資の前に、小さな試作ラインで別ルートを試す方法は費用が少なくて済む。
一方で、日本の材料や装置のメーカーには、新しい需要が生まれる余地もある。脱中国を進める海外企業からの相談が増えるかもしれない。特許、輸出管理、社内の情報管理といった技術の守り方も、同時に整えておきたい。
案の段階だからこそ、見るべき三点を絞る
確認すべきは、対象技術の線引き、許可の運用方法、施行時期の三つである。案が見直される可能性もあるため、一つの結果だけを前提にせず、複数の場合を想定した計画を用意する。社内では経営、調達、法務が同じ情報を見られる体制を作る。公式の発表が出たらすぐ動ける状態にしておくことが、現実的な備えになる。