ペロブスカイト太陽電池は屋内へ、東急と桐蔭学園の実証が示す普及戦略

ペロブスカイト太陽電池は屋内へ、東急と桐蔭学園の実証が示す普及戦略のイメージ

ニュースの概要

東急と桐蔭学園は7月17日、商業施設の青葉台東急スクエアにある店舗区画で、ペロブスカイト太陽電池を屋内で使う実証を始めました。直射日光が届かない公共空間に設置し、買い物客が普段の行動の中で発電設備を見られる点が特徴です。桐蔭横浜大学が作製したフィルム型電池を東急が設置、運用し、屋内照明から得られる電力や設置条件を検証します。将来は駅や既存建物への応用も視野に入れており、広い屋根や外壁を確保しにくい都市部で、発電場所を増やす新たな試みとなります。

引用元: 東急と桐蔭学園、商業施設内でペロブスカイト太陽電池の屋内実証を開始(TOKYU CORPORATION)

分析・見解

今回の実証の重要性は、ペロブスカイト太陽電池を「日射の弱い場所でも使えるか」という実験にとどめず、都市の電力消費が発生する場所そのものに組み込もうとしている点にあります。従来の太陽光発電は、屋根や外壁に十分な面積があり、日影が少ないことが前提でした。しかし駅、商業施設、学校、病院では、発電に使える面積よりも、照明、案内表示、センサー、通信機器などの小規模な電力需要が多数存在します。屋内型では大容量発電を狙うのではなく、需要の近くで少量を継続的に補う設計が現実的です。

屋内照明は太陽光より照度が低く、一般的な店舗では数百ルクス程度の場所も珍しくありません。一方、ペロブスカイト電池は光の波長に合わせて材料や構造を調整でき、白色照明や発光ダイオードの光を利用する屋内発電で、従来型の太陽電池との差を生みやすいとされます。ただし、屋外の発電量をそのまま屋内に当てはめることはできません。照度、照明の点灯時間、光の入射角、電池の面積、変換効率を同時に記録し、年間の回収電力量を評価する必要があります。瞬間的な出力値だけでは、実用性を誤って判断します。

実証で特に見たいのは、電池単体の性能よりも、店舗運営との相性です。人の接触、清掃、什器の移動、温度変化、結露、照明の交換が、薄いフィルムにどの程度影響するかが普及の分かれ目になります。駅や商業施設では、安全性と意匠性も重要です。剥離や破損を防ぐ固定方法、難燃性、交換時の廃棄手順、配線を目立たせない施工が必要で、発電効率が高くても維持管理が複雑なら導入は広がりません。

独自の視点で見ると、屋内実証の価値は発電量の競争ではなく、電力を使う設備と発電装置を一体化する設計ルールを作れることにあります。例えば、照明下の壁面に電池を貼り、蓄電した電力で人流センサーや電子棚札を動かせば、配線工事や電池交換の回数を減らせます。利用者が発電の仕組みを目にすることで、環境配慮を広告ではなく施設体験として示せる効果もあります。今後は、屋内発電の出力、寿命、施工費、保守費、二酸化炭素削減量を同じ基準で比較できるかが、技術の評価を左右します。屋外の大規模発電とは別の市場として、まずは低消費電力機器向けの標準化が進む可能性が高いでしょう。

ビジネスへの影響

企業が導入を検討する際、最初に決めるべきなのは「何ワット発電できるか」ではなく、「どの機器の電源を置き換えるか」です。人感センサー、温湿度計、ビーコン、表示灯、電子棚札など、消費電力が小さく、電池交換や配線工事に費用がかかる機器を候補にすると、屋内型の利点を評価しやすくなります。逆に、空調や大型表示機器の電力を賄う用途では、必要面積と照明条件を先に確認し、過大な期待を避けるべきです。

意思決定では、発電量、照度、点灯時間を15分単位などで測定し、季節や営業時間の違いを含めて年間データに換算します。さらに、フィルムの交換周期、清掃時の破損リスク、配線工事、蓄電池の有無、廃棄費用まで含めた総保有費用で比較することが重要です。新設施設だけでなく、既存店舗へ後付けできるかも大きな判断材料になります。施工を休業時間内に完了できる構造なら、導入障壁は下がります。

商業施設の運営者にとっては、発電設備を広告や環境報告の展示物として活用できる点も見逃せません。発電量を画面で表示し、来館者の行動や店舗の電力消費と結び付ければ、脱炭素の取り組みを具体的に伝えられます。ただし、実績値を過度に誇張すると信頼を損なうため、照明条件、測定期間、対象機器を明記する必要があります。まず一つの区画で試し、費用、保守、顧客反応を検証してから駅や複数施設へ横展開する段階的な投資が適しています。

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